Right to know one's origins
「出自を知る権利」とは、自分の出生や親の情報、家族に関する経緯など、自分の出自に関する情報を知る権利のことです。特に、養子や生殖医療(精子提供や卵子提供など)によって生まれた人が、自分の遺伝上の親や家系を知ることを求める権利を指します。
1985年にスウェーデンが世界で初めて法制度化し、イギリスは2005年、ドイツでは2017年に制定されています。現在は世界各国で出自を知る権利を法的に保障する動きがあり、日本でも議論が進んでいます。
出自を知る権利が制度化されると、生殖医療によって生まれた人々が自分の遺伝上の親や家族背景について知ることが容易になります。たとえば、先に挙げたスウェーデンやドイツなどでは、精子や卵子の提供者の匿名性が廃止され、子どもが一定年齢に達すると提供者の情報にアクセスできる制度が整備されています。この制度により、個人が自分のアイデンティティや健康リスクについての理解を深めることが可能になります。また、出自を知ることによって心理的な安心感を得ることができるとされています。
日本を含む世界の国々が出自を知る権利の制度化を目指す背景には、主に以下の理由があります。
1. アイデンティティの確立
自分のルーツを知ることは、自己認識やアイデンティティ形成において重要と考えられています。特に養子や生殖補助医療で生まれた人々にとって、自分の出自を知ることは自己理解が深まり、心理的な安心感を得ることができると言われています。
2. 医療・健康リスクへの対処
各自が自分の出自を知ることで、遺伝性の病気や健康リスクに関する情報が得られ、適切な医療措置や予防を講じることが可能になります。これは、個人の健康を守るうえで重要な情報です。
3. 権利としての尊重
出自に関する情報を知ることは基本的人権の一部であると考えられています。人間の尊厳や自己決定権を尊重する観点からも、制度化が求められています。
4. 情報の一元管理
現在、生殖医療で生まれた医療情報の管理の仕方は、個別の大学病院やクリニックでまちまちです。これまでAIDで生まれた人が個別の大学病院やクリニックに情報を求めたところ、廃棄してすでにないと回答されたケースも複数あり、国として一元的に医療情報の保管をする必要性が高まっています。
DOGはこれまで、出自を知る権利の重要性をさまざまな方法で訴えてきましたが、ゴールは道半ばです。今現在もパンフレットの作成・本の出版や、各メンバーの声を新聞記事として取り上げてもらうなどの活動、ならびに、国会へのロビー活動も行っています。それにより、少しずつですが社会の声も変わってきたと感じています。